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「富田さん」
「ん?どうし……」
どうした?
そう言おうと目線をやる。言葉が出る前俺の頬に触れたもの——それに気付くまで数秒かかった。
「……す、すみません。俺、帰ります」
「え、笹木くん!?」
そのまま笹木くんは出て行ってしまった。
俺、今何された……?
完全に思考が停止した。ただ、自分の頬に触れた柔らかい熱に、意識が持って行かれている。それが離れた後、俺の視界に映ったのは頬を赤らめた彼の姿だった。
「今のって……」
キス…?
思った途端に、一気に顔に熱が灯る。
「へ、え……?」
情けない声が漏れるだけだった。何年振りかの心臓の鼓動の速さに戸惑った。そしてそれは、彼への気持ちを表してもいると自覚した。
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