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「ありがとう」
「いえ、いつも美味しいご飯頂いているので」
食休みと称して、毎回10分程度ゆっくりする時間がある。その時に彼の大学の話や最近の事について話す。この時間も、俺には久し振りに感じた。
「手伝って貰うにはキッチン狭いよね」
「いえ。そんな事は」
「そう?」
こくりと笹木くんは首を小さく縦に振る。俺はベッドに座り、彼はその縁にもたれるように座って、その時間帯にやっていたドラマを流した。9時台にやっているものにしてはつまらない内容で、それは彼も同じだったらしい。
「最近、大学どう?」
自然と、そんな会話になる。
「楽しいです。友達もみんな優しくて。彼女出来た子もいて」
「え、もう?」
「はは、凄いですよね。その子達凄く仲よくて」
「へえ!いいね。恋愛はしといてなんぼだよ。経験になるし……って、独身の俺が言うのもなんだけど」
今まで失敗続きだし、と付け加える。
「富田さん彼女いないの不思議です、素敵な人なのに」
「はは、お世辞でも嬉しいよ」
眉を下げつつそう笑う。でも俺の言葉を聞いた笹木くんの声は、何だか不機嫌そうに曲がった。
「……お世辞じゃ、ないのに」
ぷすっと頬を膨らませる彼の姿に、心がじんとする。自然と笑みが溢れて、腕が伸びた。サラリと艶のある黒髪に触れ、優しく頭を撫でる。
「ほんと、俺も良い人に会えるといいな」
恥ずかしさからなのか、笹木くんの顔が仄かに赤くなっているのが分かった。
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