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豹変

翌日。 平日にも関わらず隣町にある動物園は家族連れでこみ合っていた。 一太をレンタルしたベビーカーに乗せ、颯人さんと一緒に園内を見て回った。 茨木さんに言われた事を忘れた訳じゃない。メモ帳の一番最後のページに、結婚出来ません、ごめんなさいとは書いてきたけど、なかなか切り出せずにいた。 「まま~~!!」 ミーアキットや、ウサギ、モルモットと直接触れ合えるコーナーへ向かっていたら一太が急にぐずり始めた。 「お腹、空いたんじゃないか?」 颯人さんに言われて、近くにあったベンチに移動し、少し早めのお昼を食べることに。 お弁当を広げていると、彼のスマホの着信が鳴り出した。画面に目を遣るなり、それまで笑顔だった彼の表情が一変。とたんに不機嫌になり、苛立ちを露にした。 「ごめん。先に食べてていいから」 それだけ口にすると、スマホを耳にあてながらどこかに行ってしまった。 ニコニコの笑顔でおにぎりを口いっぱいに頬張る一太を眺めていたら、今度は自分の携帯が鳴り出した。 画面に目を遣ると橘さんからのショートメールが届いていた。 『卯月が、未知さんの弟さんから電話が来ないとボヤいてまして。すみませんが、一度電話を掛けてくださると非常に助かります』 内容の面白さに思わず噴き出しそうになった。 「まま・・・?」 一太が不思議そうに首を傾げていた。 ごめんね、何でもないの。笑顔で息子に返し、気を取り直し、卯月さんの番号に掛けた。 『おぅ、一太か?』 すぐ電話に出てくれた。 橘さんの声かな?くすくすと電話の側で苦笑いする声も耳に同時に聞こえてきた。 『早く一太に代わってくれ』 別に僕はお呼びじゃないみたい。急かされて一太の耳に携帯をあてた。 「おじちゃん!」 息子の声が一段と弾み、目もキラキラと輝きだした。颯人さんといるときはまるで違う。 よほど卯月さんのことが気に入ったみたいで。何度も大きく頷いては、そのたびに大きい声ではいと返事していた。 「未知、ごめんな」 颯人さんが笑顔で戻ってきた。 でも、一太を見てすぐに怪訝そうな表情を浮かべた。

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