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一途に愛されて

あのあと、森さんを橘さんに託し、駅前の大通りに建ち並ぶ商業ビルの一階にある宝飾店に連れていかれた。一太は泣き疲れて彼の腕の中ですやすやと熟睡している。 笑顔で出迎えてくれた男性店員さんはどうやら知り合いみたいで、話しが弾んでいた。 「卯月、聞いたぞ。再婚するんだって?その子は?」 「一太。2才になる。かわいいだろ?」 店員さんが辺りをキョロキョロと見回した。 店内にいるのは僕たちしかいないから、自然と目が合うわけで。 「男・・・の子?卯月、もしかして・・・」 「あぁ、そうだ」 「そうだって、そんなにあっさりと」 男性店員は目を丸くして、僕の事を二度見していた。 「未知、おいで」彼に手招きされ、一歩前に出ると、そっと手を握られた。 「コイツは幼馴染みの坪井。ここのオーナーをしている」 「初めまして坪井です」 今度はなぜかクスリと笑われた。 好きなの選べ、彼に言われショーケースを覗き込んだ。 一、十・・・ 値段を見てびっくり。ゼロが一つ多いんじゃないかって思わず何度も確認してしまった。 「そんなに悩む必要ないだろ?」 さまざまな素材でできたブランドものの結婚指環から彼が無造作に選んだのは、ペアで七十万もするプラチナリング。 「これにしよう」 って値段もろくに見ずに決めてしまった。卯月さん七十万もするんだよそれ。僕の給料九ヶ月分だよ。 彼の服の裾を引っ張り、手頃な値段の結婚指環が並んでいる別のショーケースの方を指差した。 「坪井、これで」 それなのに彼、完全無視で。 【卯月さん!】 気が付いて欲しくてもう一度。今度は強めに引っ張った。 そしたら目を釣り上げて睨まれた。 無言の圧力にそっと手を離し、小さく頷くしかなくて。 「極力妻に触れるなよ」 「はぁ!?サイズを計れないだろうが」 「そこはどうにかしろ」 「お前な・・・」 坪井さんがほとほと困った顔でため息をついた。

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