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彼と結ばれて

「ん!?どうした?」 開店の準備を終え、カウンター席に座りインスタントのコーヒーを片手に一息つく茨木さんの隣に腰を下ろした。 最初に、昨日の事を謝ります。すみませんでした。と書いたメモを差し出した。 それから、卯月さんと結婚することをメモに書いて伝えた。 「そうか、おめでとうと言いたい所だけど、奥さんと、その・・・まだ離婚が成立していないんだろ?彼を疑う訳じゃないが大丈夫なのか?」 茨木さんが心配するのも無理ない。 「子供を作るためだけに利用されているんじゃないか、騙されてるんじゃないかって心配で心配で・・・」 茨木さんが何度もコーヒーを啜った。 「でも、ヤクザを止めて未知と一緒になる、そう言った彼の目は嘘をついているようには見えなかったからな・・・」 落ち着くためだろうか、何度も深呼吸する茨木さん。 そんな彼に、ごめんなさい、今まで散々世話になっていながら心配ばかり掛けて。ただ謝るしかなかった。 「未知が謝ることはない。好きな人と一緒になるんだから・・・あと、そうだ・・・」 まだ気がかりなことがあるみたいで、マグカップを両手でギュッと握り締めた。 「ご両親に結婚するとだけ、伝えた方がいいと思うよ。子供のことを心配していない親なんていないんだから。手紙を出したらいい、 ここの住所を使って構わないから」 ありがとう茨木さんと、震える手で書いた。 一太の命を僕から奪おうとした両親を3年過ぎた今も心のどこかで許す気にはなれなくて。 手紙を書きます、すぐには返せなかった。 いつまでも過去に拘ってはいけない。逃げてばかりいては先に進めない。 頭では分かっているのに。それを行動に移すのがどうしても怖かった。

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