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彼と結ばれて
「まま‼」ランチの慌ただしい時間が過ぎた頃、卯月さんと手を握りながら一太がひょっこりと現れた。二人の背後に、長身でがっしりとした体格の大男が立っていて、その鋭い眼差しで興味深そうに店内をキョロキョロと見回していた。
「未知、彼はうちの組の幹部の一人で根岸だ」
「遥琉が随分と若いのと結婚するって聞いて。面を拝ませろって何度頼んでも会わせてくれねぇから。へぇ~なかなか可愛い子じゃあねぇか」
ジロリと顔を覗き込まれ、目が合った瞬間、ニヤリと笑われた。
卯月さんとは全然違う気迫に気圧され体が縮み上がった。
「そんなに怖がる事ないだろう」
びくびくする僕を見て豪快に笑い出す男性。
カウンターの中にいる茨木さんとほんの一瞬視線が合って。その瞬間、男性の顔色が変わった。目を大きく見開き2度、3度茨木さんの顔を確認して、卯月さんの腕を掴むと耳元に小声で何かを囁いていた。
卯月さんは表情を変えることなくただ頷いていた。
「マスター、ブラックを二つ」
そして、何事もなかったように一太を椅子に座らせ、腰を下ろす卯月さんと男性。
男性は茨木さんと視線をなるべく合わせないように、観察するように眺めていた。
そんな彼の行動が気になって見ていたら、「未知‼」卯月さんの苛立った声が飛んできた。彼を見ると、一太が椅子から落ちないよう背中を手で支えながら、頬っぺたをこれでもかと膨らませて憮然としていた。
あれ、これってもしかして・・・
焼きもち、妬いてる?
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