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監禁
どんなに抗っても、お兄ちゃんは止めてくれなかった。
ピチャピチャと陰部から響く淫らな水音。両手の自由がきくなら、耳を塞ぐことが出来たのに。
たった五分がこれほど長いとは。嗚咽を漏らし、歯を食いしばってただ時間が過ぎるのをじっと我慢した。
「時間だぞ」ドアの向こうから颯人さんの声がしてきて。
舌打ちし、渋々ながらも、お兄ちゃんの指が蜜口から離れていった。
「これを羽織れ」
紙袋からフードつきのパーカーを取り出すと、頭からスッポリと被せられた。
「一太のところに帰りたいか?」一瞬空耳かと思った。お兄ちゃんがそんなこと言うはずないのに。
「そんなに見詰めるなよ。勘違いするだろ?」
くすりと苦笑いし、頤に手が触れてきて。指先でそっとラインを撫でられ、そのまま掬い上げられ触れるだけの軽い口付けをされた。
あまりの突然のことで抵抗すらできなかった。
目をぱちくりする僕にお兄ちゃんは、してやったりとばかりにほくそ笑んでいた。「ほら、行くぞ」腕を強く引っ張られ、ラグマットから起こされて部屋の外へと連れ出された。
薄暗い廊下の壁に前で腕を組んだ颯人さんが寄り掛かっていた。
「昇龍会の若いのが辺りをうろついているんだ。場所を変える」
周囲を警戒しながら、無言で先頭に立ち歩き出す颯人さん。階段を足早に駆け下りて出口に向かった。
彼が扉のドアノブに手を置いたとき、同じタイミングで、扉がギィーィと音を立ててゆっくりと開いた。
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