123 / 3257

その後

「あの、そろそろ式を始めても宜しいでしょうか?」 係りの方が申し訳なさそうに声を掛けてくれた。 「すみません、あと五分だけ時間を頂けますか?」 軽く係りの方に頭を下げると、ズボンのポケットから真っ白なハンカチを取り出して、目元をそっと拭いてくれた。泣き過ぎだって苦笑いしながら。そういうお父さんだって泣いてる癖に。 「三週間前、今度は卯月さんが結婚式の招待状を持ってうちを訪ねてきた。その時、産まれたばかりの遥香を撮した動画を見せてもらったんだ。未知が産まれた日のことを思い出したよ。例え血は繋がっていなくても、未知は父さん自慢の息子・・・いや、娘だ。とても素敵な旦那さんに巡り合って良かったな。今度こそ幸せになるんだぞ。未知のお陰でもう一人の娘にも会えたし感謝している。それと尊のこと、すまなかった」 頭を下げる事じゃないのに。 「未知、父さんと一緒に歩いてくれるか?嫌なら、茨木さんに頼むが」 照れ臭いのかもじもじと体を横に揺するお父さん。 【嫌な訳がない】 涙をハンカチで拭って、大きく頷いて。父さんの腕に手をそっと絡めた。 「ありがとう、未知。父さんは果報者だ」 よほど嬉しかったのか感極まり泣き出してしまった。お父さん泣きすぎだから。僕も人のこといえないけれど。 重厚な佇まいの扉が両開きでゆっくりと開いて。壇上で待っていた彼が笑顔で振り返った。お揃いの真っ白なタキシートに身を包んだ彼。ステンドグラスの眩い光に包まれてきらきらと光輝いて見えた。

ともだちにシェアしよう!