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その後
【・・・父さん・・・嘘・・・何で?】
目を丸くし思わず二度見した。
【僕や一太を捨てたはずじゃ・・・】
「三年前の、六月四日。予定日より十日遅れたものの、3180gの元気な男の子が誕生。母子ともに健康。普通の男の子だ、良かった・・・茨木さんがまめに連絡を寄越してくれていたんだ。父さんの一字をもらって゛一太゛っていう名前どうかな?血が繋がっていなくても僕の父さんは父さんだけだもの。そう言ってくれたって聞いて涙が出るくらい嬉しかったよ。あんな酷いことをしたのに。一ヶ月健診も、十か月健診も、一歳半健診も異常なし。予防接種も医師の指示通りちゃんと受けている。未知は、ちゃんとママをしているから、安心しろって・・・・一太は素直でいい子だな。人見知りもせず、みんなに可愛がってもらって。未知、ごめんな。父さんと母さん、一太を殺そうとした。お前の将来を考えて、堕とした方が幸せになれると・・・すまない・・・」
父さんは目に涙を浮かべ言葉を続けた。
【今、それを言われたら僕だって・・・】
次から次に溢れる涙を押さえることが出来なくなるのに。
父さんから話しを聞かなかったら、何も知らないままだったのに。
「支えてやらないといけないのに。父さんも母さんも、目の前の現実から逃げたんだ。だからもう二度と未知には会わないって決めたんだ。そんなときだ。橘さんがうちに来たのは。相手がヤクザでも構わないと思った。未知が幸せになれるのなら、一太を可愛がってくれる人なら・・・母さんは未知の幸せを祈りながら、泣きながら誓約書を書いたんだ。手紙も読みたかったと思うよ。でもそれでは償いにならないからと、自分を戒め、心を鬼にして手紙を読まずに送り返したんだ」
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