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その後

「未知、私もそろそろ行くね。遥香ちゃん・・・ううん、ハルちゃん、またね」 那奈姉さん、遥香の髪を撫で撫でしてくれて、小さな手をそっと握ってくれた。 「未知さん、私共も移動しましょう。皆さんお待ちかねですよ」 橘さんがクーハンから遥香を抱き上げてくれた。しっかりと手で首を支えてくれて。お世話も手慣れたもの。すっかりもう一人のパパだ。 【橘さん】那奈姉さんのあとに続いて控室を出ようとした彼のスーツの裾を咄嗟に掴んだ。 「どうしました?」 ポケットから手紙を取り出し、彼に差し出した。 「未知さんからラブレターを頂くなんて光栄です」 【これは、ラブレターじゃなくて・・・その・・・橘さんが役所や家裁に何度も掛け合ってくれたお陰で、特別な事情があると認めてもらえて、一年も早く性別変更の手続きを済ませることが出来たから。ありがとうの手紙です】 上手く通じるか不安だったけど、橘さんは笑顔で受け取ってくれた。 ガチガチに緊張しながら式場の前の扉に立つと、隣にスッとお祖父ちゃんが現れた。実の親に頼むことが出来ないから、一緒にバージンロードを歩いてくださいって、彼と頼んだら二つ返事で快諾してくれた。 「未知・・・」名前を呼ばれて初めて、隣に立っている人がお祖父ちゃんじゃないことに気が付いた。 三年前まで。十五年間毎日その声を聞いていた。忘れもしない、懐かしい声。その持ち主は・・・

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