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番外編 かけがえのない宝物
福井さんと茂原さんとでは貫目が違うと彼。専門用語がちんぷんかんぷんな僕のために彼がメモ帳に書きながら一つずつ説明してくれた。
貫目が違う、つまり、男としての器量が違うということ。
「福井は茂原と比べて、貫目が足りないらしい。温厚な性格で争い事を好まず、話し合いで解決しようとする福井に対し、茂原はどちらかといったら、顎の立つ策士なのかも知れない」
彼が手嶌組と書いてグルグルと二回、円を描いた。
「2か月前だ。手嶌組が代替わりになったのは。新しい組長っていうのが、なかなかのキレ者らしい。噂じゃあ昇龍会と敵対関係にある何とか総業の会長らしいけど、詳しいことまでは分からない。そいつと茂原が裏で繋がっていて、何やら企んでいるらしい」
一太と遥香のあどけない寝顔を目を細めて眺める彼。
「カタギになっても、龍一家の次男坊には変わらない。だから、間違いなく俺の弱点である未知たちを付け狙ってくる。ごめんな、危険な目に合わせたくないからヤクザを辞めたのに・・・」
悔しさを滲ませる彼。
そんなことないよ。僕、お義父さんも、心さんも、裕貴さんも、龍一家の皆さん大好きだもの。
男の嫁である僕をみんな大事にしてくれる。子どもたちにも優しくしてくれるから。
彼と結婚するとき、僕も覚悟を決めたんだもの。
卯月家の嫁として、龍一家の次男坊の嫁として生きるって。
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