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番外編 逆恨み

すぐに顔を逸らし何事もなかったようにすたすたと歩いていく笹原さん。微かにだけど口角がゆがんでいた。 「知り合い⁉」 心さんに聞かれて首を横に振った。 「違うの⁉だってこの前、台所にいた未知を、ずっと見ていたんだよ。てっきり知り合いかと思って声を掛けようとしたら、すっといなくなったんだもの」 心さんに言われてはじめて、遥香が何を指さしていたのかがようやく分かった。何だろうこの嫌な感じは。胸騒ぎを覚えた。 「何⁉どうした⁉」 心さんのTシャツをツンツンと引っ張った。 「もしかして羽織りを持ってて。そう言ってるの?いいよ、別に」 心さんありがとう。彼に羽織りを持ってもらっている間にポケットからメモ帳とペンを取り出した。 『笹原さんに会ったことはない。でも、どこかで会ったような気がする』 「どこかって思い出せないの⁉」 『ごめんなさい』 「謝ることないよ」 『嫌な予感がしてならない。胸騒ぎがする』 「未知も⁉実はボクもなんだ」 彼も薄々勘づいていたみたい。 「一応、こう見えても龍一家の跡目だし。ねぇ、未知、裕貴に相談してみない⁉一太は幼稚園だから大丈夫でしょ。遥香もなるべく手元に置いて、目を離さないようにしないと」 『心さん、ありがとう』 「だから、いちいち礼なんかいらないって」 恥ずかしいのか照れて、顔を赤くしていた。普段ツンツンしてても、本当はすごく優しい彼。 「何ぼぉーとしてるの⁉ほら、急がないと」 急かされて慌てて離れに向かった。

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