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番外編 逆恨み

「心さん、未知さん大変です‼」 離れに向かう途中、血相を変え、息を切らした複数の若い衆が大慌てで駆け付けてきた。 「遥香さんがいなくなりました」 「裕貴は⁉一緒にいたはずじゃ」 「はい、それが目を離したほんの数秒の間に、忽然と姿を消したそうです」 「そんな・・・」 ギュッと手をきつく握り締めてわなわなと震わせ、上唇を噛み締めて悔しさを露にする心さん。 「未知、大丈夫⁉」 はじめ自分の耳を疑った。何かの聞き間違いじゃないかって。でも、根岸さんをはじめとする幹部の皆さんが、大きな声を張り上げ、早く探せ‼監視カメラを早く確認してこい‼と組員に指示している姿はことの重大さを物語っていた。 ふと頭の中に一太が連れ去られたときの光景が甦ってきた。 【遥香に万一のことがあったらどうしよう。一刻も早く探さないと】 手にしていた羽織りが下に落ちたのにも気が付かず、ふらふらと歩き出した。 こういうときは落ち着いて、冷静にならないといけないのは分かってる。頭では分かってるけど・・・・・

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