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番外編 逆恨み

それから数十分後。心さんの携帯が鳴り響いた。僕の携帯からもメールの着信音が鳴った。 『未知さん、ハルちゃん無事に保護しました』 橘さんが送信してくれた文字を食い入るように見詰めた。゛無事゛の二文字を見付けたとき、安堵のため息とともに大粒の涙が溢れてきた。良かった、ほんとに良かった・・・知らない人に連れていかれてどれだけ怖かったか。ママがちゃんとみていればこんなことにならなかったのに。ごめんね遥香。ママ失格だよね。 「オヤジさんがな、未知は嫁としてよく頑張ってるって褒めていた。母親としても若いのにようやってるって。俺がもっと早く気が付いて駆け付ければこんなことにならなかったのに。すまない」 笹原さんが僕の前で片膝を立てて座り込んだ。 彼の話しでは!忍び込んだ家政婦の姿を見付けあとを追ったら台所にたどり着いたみたいで、遥香が指を差していたのは笹原さんでなくその家政婦だった。屋敷内ではじめて会う見馴れない女性に、子供ながらも警戒心を抱いた遥香。 恐らく顔を見られたから連れ去られたのだろうと。 「俺の名前は笹原蒼生(そうせい)。昇龍会組長の秦蒼甫(そうすけ)の長男だ」 え!? 今なんて!? すぐには理解出来なくてきょとんと顔をあげた。 「遥琉が言っていた通り、泣き虫なんだな」 くすりと苦笑いを浮かべながら、手で涙を拭ってくれた。

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