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番外編 それでも彼が好きだから

《花蓮、本名、水盛倫也》 笹原さんから返されたメモ帳の名前を見てビックリした。カレンさんって、おとこのひと、だったんだ。 「あまり余計なことをいうと千里に怒られるから、手短に話すな」 辺りをキョロキョロと警戒する笹原さん。恐妻家なのも、お父さん譲りなのかな。千里さんの尻に敷かれているって、茨木さんがそう言ってたっけ。 「千里と同じゲイストリップショーの元ダンサーだ。見た目は女の子で、誰一人男とは気が付かない。他のダンサーにいれ込んでいた遥琉に横恋慕し、押し掛け女房ならぬ、押し掛け愛人になったんだ。橘はカレンとの交際に猛反対した。でも遥琉が好きな人ならと、黙認し態度を軟化させた。その矢先に、例の事件が起きた……裕貴もビックリしたしただろうよ。服を剥いだら男だったんだから……」 笹原さんがぷぷっと噴き出した。 「でもこの出来事があったからこそ裕貴は、同性が好きになり苦しい恋をしていた心の胸の内を知るいい機会になったらしいよ。裕貴もはじめ、心は遥琉が好きなんだと勘違いしていたらしい。それがまさか、自分だったとは…男として責任を取るのが当たり前だ、そう言って心にプロポーズして、そのまま卯月家の婿になった」 笹原さんは、断片的な事情しか知らない僕を混乱させないようにと気を遣ってくれて。ゆっくりと話しをしてくれた。 《千里さんとはどこで知り合ったんですか?》 二人の馴れ初めも聞きたくなって、メモ帳に書いて彼に見せた。 「えっと…そ、その…」 急にそわそわし始めた。 「だ、だから…あっ、そうだ、俺と千里の話しより、未知と遥琉の馴れ初めを聞かせてほしいなぁ…」 額に汗をかきながら、必死に話題を変えようとする笹原さん。 ちょうどそこへ千里さんが颯爽と現れた。

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