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番外編 過去に囚われたままの彼

二日後ーー カウンター席に腰を下ろし、右手でスマホを操作しながら、コーヒーを啜っていた千里さんと何気に目が合った。 「あのあと、遥琉とちゃんと話しをしたの⁉」 すぐに答えられずにいたら、茨木さんが代わりに答えてくれた。 「一太や遥香がいるんだ。そう簡単に別れる訳にはいかないだろう」 お義父さんに、この際だから全部白状したらどうだ。そう言われた彼。カレンさんの話しは勿論、昔入れ込んでいたダンサーが、七音人(なおと)という名前であくまでスポンサーとしての付き合いだったこと。 カレンさんや当時付き合っていた女性とは僕と出会ってすぐくらいに別れたことや、七音人さんともスポンサー契約を解除し、この三年全く連絡を取り合っていないことを包み隠さず正直に話してくれた。 「未知は遥琉の過去をすべて水に流して、元通りの生活を選んだんだ。遥琉も未知の夫として、一太や遥香の父親として一からやり直すって言ってるんだ。それでいいだろ?」 茨木さんに諭すように言われて、千里さん、それもそうねって頷いていた。 「見た目は怖いが、あぁ見えてバカがつくくらい生真面目な、それでいて愛妻家だから遥琉は……」 茨木さんのその一言に救われた気がした。 どこで住所を調べたのかカレンさんが一度だけ手紙を送ってきたことを、橘さんが正直に話してくれた。 ダンサーを辞めたあと男の娘カフェで働いていること、よりを戻したい、そう書かれてあったことを隠さず話してくれた。 彼も手紙のことを初めて知ったのか、かなり驚いていた。 未知さん、カレンさんと連絡を取り合っていない、そういった遥琉の言葉には嘘偽りはありません。信じてあげてください。 橘さんの言葉を決して疑う訳じゃないけれど……なかなか気持ちの整理が付かなかったから。 茨木さん、ありがとう。

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