212 / 3275

番外編 過去に囚われたままの彼

「スカルの呼び名は、腕に彫られたドクロの刺青から来ている。誰も本名は知らない。ある半グレ集団のリーダーだった男で、殺人以外のすべての犯罪に手を染め、手嶌組にかなりの額の上納金を納め、組長のお気に入りになり、幹部の一人に名を連ねていた。二年前に詐欺罪で逮捕され、現役を辞めカタギになった」 「私の知り合いの弁護士が、身寄りのない彼の身元引受人になったんですよ。彼は、今社会問題になっているいわゆる戸籍のない子供で、一太くらいの頃から路上で生活をしていたようです。そうした生い立ちを考慮した上で執行猶予が付いたんです」 「縣さんが、次男夫婦のところでしばらく身を隠したらどうだと提案してくれて」 「そうですか。一番安全な場所かも知れませんね。夏休みはまだまだ先ですから、転園させるしかありませんね。未知さん、それでも大丈夫ですか⁉」 僕はどうなっても構わない。でも、母親として、一太や遥香を何としてでも守り抜かないと。遥香に2度も恐い思いをさせたくないもの。 「遥琉には私の方から説明します」 「未知、橘に任せておけば大丈夫だ」 「そうよ、お兄ちゃんに任せておけば、ねっ⁉」 裕貴さんと千里さんに励まされ、コクリと頷いた。

ともだちにシェアしよう!