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番外編 誰よりも愛しているからこそお前が憎い

「そんなに怖がることないだろう?」 鬼の形相でじろりと睨まれ、足がすくんだ。 ポタッポタッと何かの滴が床に落ちていた。仄かに明るく照されている手元を目を凝らして見ると、血塗れのナイフが握り締められていた。 【……!!】 恐怖のあまり声も出なかった。 茂原さんに刺された時の情景がフラッシュバックのように甦ってきて、わなわなと震えながら、ドアに凭れるように足元から崩れ落ちた。 「久し振りだな。パパ、未知にずっと会いたかった。あの二人、なかなか未知の居場所を教えてくれなくて、本当に困ったよ」 血で染まったナイフを薄笑いを浮かべ、うっとりと見詰めるお兄ちゃん。 まさか……そんな…… 最悪の事態が脳裏を過った。 【改心し、一からやり直すって誓ったはずなのになんで?嘘だったの?】 瞼の縁に涙をため、上唇を噛み締めてお兄ちゃんを見上げた。 「再婚相手に愚弄された俺の気持ちが分かるか?」 怒りを露にし吐き捨てるように口にするお兄ちゃん。何を言ってるのか全然分からなかった。 「父も、あの女も邪魔ばかりしやがって……ーー」 「余計な事は喋るな。卯月や橘に気付かれる。早くしろ‼」 月明かりに照らされ、男が突如として姿を現した。目はつり上がり、冷たい表情をしていた。タンクトップから見える腕には、肩口から二の腕にかけてドクロの刺青が施してあった。 あっ、この人…… 裕貴さんたちが話していた人だ。名前は確かスカル……

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