220 / 3579

番外編 誰よりも愛しているからこそお前が憎い

彼と橘さんが下の様子を見に行っている間、服を拾い集め急いで身に付けた。まだ彼の熱が肌に残っていた。 【遥琉さん、大丈夫かな⁉】 なかなか彼は戻って来なかった。時間が経過するのがこんなにも長いとは。彼と一緒にいるときは楽しくてあっという間に過ぎるのに。 誰かの視線を感じゾクっと鳥肌が立った。 それは氷のように冷たくて。計り知れない憎悪に満ち溢れていた。 部屋の中を何度見回しても僕以外誰もいない。でも、気配はする。僕以外の誰かがいるのは確かだった。 何気に窓に目を遣ると風もないのにカーテンが揺れていた。寝る前に施錠したはずなのに・・・やっぱり何かがおかしい。 警戒しながらベットから下り、ドアへ急いだ。廊下にさえ出れば、若い衆が警備のために控えているはず。 「ーー未知……」 ドアノブに手を置いたときだった。 聞き覚えのある声がすぐ後ろから聞こえてきた。 最初空耳だと思った。だって彼には転居先を一切伝えていないもの。 でも、調べようと思えば、彼のことだからどんな手段を使っても調べるはず。 「未知………」 今度ははっきりと聞こえた。その瞬間、ぞくぞくと背筋に悪寒が走り、全身が総毛立った。

ともだちにシェアしよう!