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番外編 縣家の嫁

「未知さん、温かいカフェオレです。少しは眠れましたか?」 「寝れる訳ないだろう」 憮然とし腕を前で組む彼。膝を枕代わりに横になり、一睡も出来ないまま、ダイニングのソファーで朝を迎えた。 幸いなことに、一太と遥香はぐっすり熟睡してて、この騒ぎには気づくことはなかった。颯人さんと根岸さんが夜通し交代で二人を守ってくれた。 笹原さんと裕貴さんも、険しい表情を崩さず、腕を前で組んで腰を下ろしていた。三人とも誰かを待っているようだった。 彼に体を支えて貰いよろよろと体を起こした。血は洗い流したけれど、手首にはくっきりとお兄ちゃんの手のあとが残っていた。それを見て怖くてぶるぶる震え上がった僕を彼なりに気遣ってくれて。包帯をぐるぐる巻いてくれた。 マグカップを両手で持ち上げ、静かに口に運んだ。いつもより砂糖が多めなのか甘くてすごく美味しい。 「遥琉、遼成さんたちが見えられましたよ」 橘さんがドアを開けると、二人の男性が中に入ってきた。遼成さんには一度会ったことがあるからすぐに分かった。 初めて見るもう一人の男性は、遼成さんに顔立ちがすごく似ていた。多分、年は三十歳ぐらい。淡い紫色のシャツを着ていた。 眠気眼を擦りながら二度、三度とあくびをしていた。 「遼成!!龍成!!」 普段滅多なことでは怒らない彼が、珍しく声を荒げ、怒りを露にした。

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