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番外編 橘さんの結婚

ムシムシと蒸された一日がようやく暮れ、彼が帰ってきた。 「何でここに裕貴と千里がいるんだ」 まさかいるとは少しも思わなかったようで、かなり驚いていた。 「弱い女子に、ボディーガードは必要不可欠でしょ⁉」 「はぁ⁉誰がか弱い女子だって……」 己の耳を疑い、こめかみを手で押さえる彼。 「しかし、よくまぁ、笹原が許したな」 「ダーリンには言ってないの。地方公演だって、未知に行くのだって、絶対に反対されるの分かってるし。だから、内緒で来たの」 「あのな千里……」 ますます頭を悩ませる彼。 「だって妹や心に会いたかったんだもの。おめでとうって、電話じゃなく、直接未知に言いたかったの」 「そっか……分かったよ。俺も一緒に謝ってやるから、ちゃんと笹原に連絡しろよ」 「うん」 千里さん、僕や心さんに会うためにわざわざ来てくれたんだ。僕からもちゃんと笹原さんに謝らないと。 「遥琉、明日の十時から幹部の会合が……裕貴……何でお前がここにいるんだ?」 遅れて姿を現した弓削さんも、目をパチパチさせて二度三度と裕貴さんの顔を見て驚いていた。 「あっ、そうだった。急用を思い出した」 急にそわそわ、モジモジし始め、摺り足で踵を返そうとした。 「おい弓削!!」 心さんとは仲直りしたけれど、いまだ怒りが収まっていない裕貴さんが、そう易々と許すわけなどなく。 無表情のまま首根っこをがしっと鷲掴みし、どこかに引き摺っていった。 「ねぇ柚原、止めなくてもいいの?」 「たまにはお灸を据えた方が、ヤツのためだ」 「相変わらず厳しいのね」 華奢な長い脚を組み頬杖をつく千里さん。

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