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番外編 橘さんの結婚
「無事で本当に良かった」
大きく息を吐き、胸を撫で下ろす紫さん。目の奥には涙が溢れていた。
『紫さん、またご厄介になります』
メモ帳にペンを走らせ、頭を下げた。
「何言ってるの。ここは未知さんのうちでしょ。何だかんだといって、うちの主人が一番心配していたのよ」
橘さん相手に賑やかにはしゃぐ一太と遥香の声に静かに耳を傾ける紫さん。
「どうして橘は柚原と一緒になろうとしないのかしら・・・聞きにくいことをあえて聞くけど、今も橘はその・・・遥琉と・・・」
視線が忙しなく部屋のあちこちを彷徨う。
ううん、紫さんの不安を少しでも払拭しようとあえて笑顔で首を横に振った。
『僕も彼も、橘さんや柚原さんには幸せになって欲しい』
率直な想いをメモ帳に書き綴った。
あ~~もう。滅茶滅茶緊張する。
打合せが滞りなく終わり、このまま解散になるのかと思っていたら、古参の幹部さんたちが、
「遥琉、嫁さんを紹介しろ」
「オヤジが、娘が出来たってワシらに自慢ばかりするんだ。顔を拝ませろ」
そんな事を急に言い出して。
皆さんの前であいさつをすることになってしまった。
「緊張しなくていいぞ」度会さんには言われたけど、居並ぶ強面の幹部の皆さんを前に緊張するなというのがまず無理で。
ビクビクしながら腰を下ろし、膝の上に手を置いたら震えが止まらなくなってしまった。
「大丈夫、俺が側にいるから、安心しろ」
隣に座っていた彼の大きな手がすっーと伸びてきて、手の甲をギュッと握り締めてくれた。
「妻の未知です。オヤジが説明したように妻は喋ることが出来ません。色々とご面倒をお掛けしますが、何卒宜しくお願いします」
目を閉じてゆっくりと深呼吸をしてからピンと背筋を伸ばし、彼と一緒に頭を下げた。
「それともう一人、紹介したい者がいる。度会さんが末席に座っていた橘さんを手招きし、隣に座るように指示した。
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