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番外編 橘さんの結婚

「あっ、おじちゃんだ‼」 黒光りする門の前で、若い衆を従え、渡会さんが笑顔で出迎えてくれた。一太も遥香もすぐに気が付き、早く下りたいと騒ぎ始めた。 若い衆の皆さんがぐるりと車を取り囲み、警戒を強める中、ようやくドアが開いて、 「行ってもいいぞ」パパの許しを貰い、二人ともぴょんと飛び下り元気に走っていった。 「遅いからおじちゃん心配したぞ」 「おじちゃんあそぼ」 「ハルちゃんも‼」 ぴょんぴょんと嬉しそうに飛び跳ねる二人を目を細めて見つめる渡会さん。いゃあ、困ったな。独り言を口にすると頭を掻いた。 「一太くん、ハルちゃん。パパや度会さんはこれから大事なお仕事があるので、終わるまで私と遊びましょう」 橘さんがナイスなタイミングで声を掛けてくれて。仲良く手を繋ぎ母屋へと向かった。 「色々と大変だったみたいだな」 子供たちがいなくなった途端に、度会さんの表情がガラリと変わった。 「警告だろうな。次はお前の妻子の番だ。覚悟しろって」 「そうか。早いとこ、手を打った方がいいな」 腕を前で組み、険しい表情を浮かべる度会さん。 「オヤジ、カシラ、幹部の皆さん、お待ちかねです」言いにくそうに若い衆が声を二人に掛けた。 「おっ、そうだった。遥琉、柚原行くぞ」 母屋に向かって歩き出した度会さん。 柚原さんと肩を並べ、何やら二言、三言言葉を交わしていた。 「大丈夫か?」 彼がそっと手を絡ませてきた。うん、頷くと、恋人繋ぎにしてくれた。 みんなの前で少し恥ずかしいけれど、何気ない彼の気遣い、優しさがすごく嬉しかった。

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