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番外編 橘さんの結婚

「未知は見るな、腹の子に障るから。一太も遥香も見ちゃダメだ」 彼が二人の肩を抱き寄せた。 「柚原、車を出せ」 彼に急かされ急発進する車。 助手席の橘さんが心配して何度か後ろを振り返ってくれた。 「柚原、スカルを知ってるのか?」 ハンドルを握る彼の手がぴくりと微かに震えた。 「あぁ、ヤツとは色々と因縁があって……弾よけしていたある組の幹部を目の前で殺された。時間にして僅か数秒、ヤツの仕事は神業だ。的にかけられたら最後。命はない」 「そうか」 唇を噛みしめ、一太と遥香をギュッと抱き締める彼。 「こんな小さい子どもを付け狙ってどうするんだ?未知だって、腹の子だって無関係だろ」 悔しさを滲ませる彼に、柚原さんが力強く言葉を返した。 「遥琉、俺は命に変えても未知や子供たちを守る。だから、安心しろ」 チラッとほんの一瞬、横に目を向ける柚原さん。本当は橘、お前だけを守りたい……そう言いたいのをぐっと堪えているようだった。 そして報われることのない恋に悶える柚原さんに、かつての自分の姿を重ね合わせ、いたたまれなくなった。 それは彼も一緒で…… ピピっとメールの着信音が鳴り、画面を見ると、 『会合のあと、柚原にプロポーズさせる。決して橘が邪魔だからじゃない。この16年間、辛苦を共にしてきた仲だからこそ、橘にも柚原にも幸せになってほしい』 ハッとして見上げると、ニコッと少しだけ笑顔が戻った彼に頭をそっと撫でられた。

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