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番外編 橘さんの結婚

朝からジリジリと蒸されるように暑かった。 「未知、俺の側から絶対に離れるなよ」 外に出た瞬間、彼の目付きもそして顔つきもガラリと変わった。優しいパパの顔から、見惚れるくらい凛々しい顔に。 組の皆さんや、柚原さんに守られ、彼の後ろにぴったりとくっついて、子供たちの手を引いて足早に路肩に停車している車に向かった。 いつ何時襲われるか分からない切迫した状況に変わりはなく。なんともいえない緊張感が漂っていた。 最初に異変に気が付いたのは柚原さんだった。 「ーー……スカル?遥琉、未知早く車に乗れ!!」 彼が声をあげると同時に、黒い塊が隣接する別のビルの屋上から炎熱のアスファルトへどすんと落ちてきた。 多くの通行人が悲鳴を上げ、すぐに人だかりが出来た。「だれか救急車!!」怒号が飛び交い辺りは騒然となった。 今まで嗅いだことがないくらい異様な匂いだった。焦げ臭い匂いがあたりに充満し、次第に息苦しくなってきた。 くらくらと目が回り、体がふらついて立ってるのもやっとの状態で、 「大丈夫か?」 足元から崩れ落ちそうになり、寸でのところで彼が肩を支えてくれた。手を引っ張られやっとの思いで車に乗り込んだ。 子供たちは柚原さんと橘さんがそれぞれ抱っこしてくれて車に乗せてくれた。

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