《柚原さん 新婚生活の邪魔をしてごめんなさい》 昨夜部屋に急いで戻ったら、し～んと静まり返っていて。そぉーと見たら右腕に一太を抱っこし、遥香を左腕に抱っこしたまま柚原さんもすやすやと穏やかな寝息を立てて熟睡していた。 夫婦水入らずの時間がどれだけ貴重で大切なものか。誰よりも分かるからこそ、なんだか申し訳なくて。メモに謝罪の言葉を書いて柚原さんに渡した。 「言い方が悪かったな。未知は何も悪くない。むしろ一太と遥香の面倒をみれて嬉しかった」 メモを見るなりプッと吹き出す柚原さん。子供みたいに無邪気に笑う姿は、普段見せる姿とはだいぶかけ離れていた。 「俺の恋煩いはみんな知ってる。だから今まで嫌になるくらい散々バカにされてきた。遥琉や千里くらいだ。諦めずに想い続ければいつか叶うって言ってくれたのは……」 柚原さんの視線が、縁側で子供たちと一緒に絵本を読む橘さんへと向けられた。 「真沙哉はシノギのためなら手段は選ばない、冷酷無比な男だ。人を騙し借金漬けにして首が回らなくなったら、平気で風俗に売り飛ばす。例え身内でも妊婦でも子供でも容赦しない。実の弟でさえ虫けらのようにしか思っていなかった」 柚原さんの話しを聞いて、彼に言われたことをようやく思い出すことが出来た。