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番外編 波紋

洌崎さん襲撃事件の実行犯として逮捕されたのは大上組に関わり合いがある男だった。 昇龍会と大上組は睨み合ったまま一歩も譲らず一週間近く膠着状態事態が続いた。 事態を打開するため、龍一家と縣一家の代目継承と、盃直しが予定より2か月前倒しで急遽行われることになった。 「ねぇ、ねぇうちのダーリン見て。すっごく格好いいでしょ」 笹原さんが送ってくれた動画を見ながら千里さんが黄色い歓声を上げていた。 「うちの裕貴だって、負けてないから」 鷹の羽を二枚重ねた、違い鷹の羽の模様の秦家の家紋入りの仙台平の袴を身に纏い、大勢の舎弟を前に威風堂々とした態度で式に臨む裕貴さん。 心さんはうっとりとして食い入るように画面を見ていた。 弱冠36歳の若輩者が組長になるのは時期早々と不安の声を上げる幹部もいたみたいだけど、笹原さんが裕貴さんの補佐に就き、お祖父ちゃんが後見人に就くことで丸く収まったみたい。 度会さんの所が一番安全だ。 ここには、遥琉と柚原と弓削がいる。 橘だっている。 裕貴さんと一緒に帰るつもりでいた心さん。 命は一つしかない。心の身代わりはこの世にはいない。だから、ここで待っていてくれ。 裕貴さんに説得され、泣く泣く彼を見送った。

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