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番外編 波紋
「昔はギャンギャン女みたく泣いてばかりいたのにな、虫けらでも、役立たずのクズでも変われば変わるものだな」
「虫けらでも、役立たずのクズでもない。僕は卯月心だよ。実の弟の名前も覚えられないの?」
「何だと」
真沙哉さんの顔つきが変わった。
「未知!!心!!」その時、彼の声が聞こえてきた。
たく、舌打ちをすると銃を突き付けていた若い衆の胸ぐらを掴み、後ろへ突き飛ばし、鬼の形相で猛然と僕たちに向かってきた。
「未知逃げて!!」
心さんが大声で叫んだ。
【心さんや若い衆を置いて一人だけ逃げる訳にはいかない】
恐怖に震えながらも真沙哉さんの目を見据えた。
「どけ、邪魔だ」
心さんの肩を手で押し退け、乱暴に手首を掴まれた。手の跡が残るくらい強い力で。
「未知を離して!」
掴み掛かろうとした心さんを睨み付け、その手を払い除けた。
「聞こえないのか?邪魔だ」
表情一つ変えず冷たく言い放つと、銃口を首筋にぐいっと捩じ込むように押し当てられた。「大人しくしてろ」耳元で囁かれ全身が震え上がった。
「姐さん!!」
「くそっ!!」
若い衆も僕が人質では手出しが出来ず、為す術もなくただ立ち尽くすしかなかった。
そのときだった。
「………動くな」
カチャという金属音と共によく響く低いバリトンの声が真沙哉さんの背後から聞こえてきた。
初めて耳にするその声の持ち主は……
「………嘘………」
思わず声を呑む心さん。
僕も驚きのあまり息を呑んだ。
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