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番外編 元婚約者の出現に焼きもち妬きの彼、またまた大暴走

『優璃ちょっと待て!』 橘さんを止める柚原さんの声が漏れ聞こえてきた。 『さっきから黙って聞いてれば・・・未知さんを、節操なしの誰にでも脚を開く尻軽女みたく言わないで頂けますか⁉未知さんが好きなのは貴方だけです。焼きもち妬きで世話のかかる亭主に黙って尽くす、まさに良妻賢母の鑑じゃないですか。違いますか⁉』 早口で捲し立てる橘さん。 矢継ぎ早に耳の痛い事を言われ、反論すら出来ずタジタジになる彼。 『私の可愛い妹を泣かせるなど言語道断。そんなに疑うなら、明日、未知さんを実家に帰らせますよ』 「それだけは許してくれ」 しまいにはスマホを握り締め、しゅんと項垂れて電話の向こう側にいる橘さんに謝りはじめた。 橘さんが言ってる実家は両親のとこじゃない。茨木さんのところだ。 未知、遥琉と喧嘩したら、一太や遥香を連れていつでも帰ってこい。僕には優しく言うのに、彼には、もし喧嘩の原因がお前にあったら二度と帰さねぇから、よ~く覚えておけと真顔で脅しつけていたから、さすがの彼も「はい」としか答えられなかった。 「はなから疑ったりしてごめん。頼むから実家には帰らないでくれ」 電話を切るなり平蜘蛛のようになって謝る彼。 【遥琉さん、ごめんなさいは僕も同じ】 両手をついて詫びた。 「何で謝るんだ、悪いのは俺だろ!?顔をあげてくれ」 言われた通り恐る恐る顔を上げると、照れ笑いを浮かべる彼と目があった。 「未知、少しだけ待ってくれるか?」 僕の腰にタオルケットを掛けると、むくっと立ち上がり、盗聴器か隠しカメラがあるはずだ、ぶつぶつと一人言を言いながら部屋のなかをあちこち探しはじめた。

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