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番外編 拗れた片恋

「肩書きは一応、本部長なんだ。事務所にいて貰わないと」 「引き受けたつもりはない」 「あのな……」 溜め息をつく弓削さん。 用意された若頭の椅子を頑なに固辞した柚原さん。話し合いの末、組事務所の責任者である本部長に決まった。 でも殆ど事務所には顔を出さず、自宅で仕事をすることが多い橘さんに朝から晩まで引っ付いて離れようとしない。唯一の肉親だった茜音さんを失った喪失感を埋めるために橘さんに甘えているのを知ってるからか皆さん、敢えて咎めようとはしない。 「橘、柚原、昨夜はよくぞ邪魔をしてくれたな。お陰で寝不足だ」 「未知さんの声は貴方だけのものじゃありませんよ」 「そうそう」 ウンウンと橘さんの膝の上で大きく頷く柚原さん。 「柚原まで橘の真似をしなくていい」 「未知の声は、一度聞いたら虜になるくらい、愛らしくて可愛い………イクときの声が一番そそられる。なぁ、橘」 「ええ。未知さんの声を独り占めしようなんて百年早いですよ」 橘さんも、柚原さんも!! それ以上は禁句!! 遥香の前だよ!千里さんもいるし! 舎弟の皆さんだって。 恥ずかしくて顔から火が出そうになった。

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