お昼過ぎに根岸さんや弓削さんら大勢の舎弟を従え彼が事務所から戻ってきた。凛々しく雄々しいその姿に思わず見惚れてしまうくらい格好良かった。 千里さんとお絵かきをして遊んでいた遥香は、大好きなパパの帰宅に大喜びでパタパタと駆けていった。 「パパ、おかえりなしゃい!!」 「ただいま遥香。お利口さんにしていたか？」 「うん!!」 軽々と片腕で抱き上げると、意気揚々とリビングに向かった。 これからお昼を食べながら根岸さんらと打ち合わせをするみたい。 「一太、久し振りに登園できたのか？」 「信孝さんとナオさんが、子供たちと一緒に迎えてきてくれて。大きい男の人が怖いけど一太頑張ってくるね。健気にも笑顔を見せて元気に出掛けて行ったわ」 「そっか、手間を掛けさせてすまなかった」 彼が組長に就任し組織も刷新され、新たに組長付きになった根岸さんや、若頭の弓削さんを中心に新生菱沼組がスタートした。昔、やないファイナンスを経営していた手腕を買われ、菱沼ビルディングの社長も兼任することになり、一気に忙しくなった。 「事務所に顔も出さないで何してるんだ柚原」 「何って……見て分からないのか？」 弓削さんがリビングのドアを開けると、ソファーに寝転び橘さんに甘える柚原さんの姿があった。 橘さんは迷惑そうに眉を寄せながら、パソコンに向かって仕事の真っ最中だった。