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番外編 九鬼総業の若頭

「和泉さんは大丈夫ですよ。鷲崎さんがちゃんと見つけてくれますよ。お腹を冷やさないように着替えましょう」 橘さん・・・ 思わず服の裾を掴んだ。 「そんな顔をしていたら、ベビハルさんたちまで不安になりますよ」 にっこりと微笑んで、髪をそっと優しく撫でてくれた。 翌朝、一太は彼の手をしっかり握り締め幼稚園へと向かった。 千里さんに遥香を抱っこしてもらい、ビルの前で二人を見送った。 大勢の若い衆が目を光らせ夜通しで警戒にあたってくれていた。颯人さんも弾よけとして僕の側から片時も離れず警備にあたってくれていたけれど、彼はそれが面白くないみたい。 「じゃあ、戻ろうか」 千里さんに促され、ビルの中に戻ろうとした時だった。 パンパンとーー病院で耳にした、あの乾いた音が2回耳を掠めていった。 「お前ら、姐さんをお守りしろ‼」 颯人さんが大声を張り上げ若い衆に指示を飛ばした。音に気が付いた弓削さんもすぐに駆け付けてくれて、辺りを警戒しながらビルの中に僕達を押し込んだ。 「千里、遥琉を呼び戻せ。それと柚原に会長を呼ぶように言え。九鬼総業の鳥飼がわざわざおいでになった、そう言えば分かる」 すっと静かに目の前に滑り込んできたシルバーのセダンを睨みように見据える弓削さん。 「例え空砲でも、子供に銃を向けるなどもってのほか」 こんなに怖い顔、初めて見るかも知れない。すっかり怯え泣きじゃくる遥香をあやしながら、千里さんと足早にエレベーターへと駆け込んだ。

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