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番外編 修羅の妄執

「鳥飼どうした!?」 「いや何でもない」 頭を振り言葉を濁す鳥飼さん。 「遥琉、彼女は?」 「笹原千里。昇龍会の先代の長男の女房だ。体調が優れない妻に代わり、子供たちの面倒をみてくれている」 「昇龍会の先代に息子がいたなど今まで一度も聞いたことがないぞ」 「要は隠し子だ」 鳥飼さんは、彼のその一言ですべてを理解したみたいだった。 「九鬼総業の鳥飼だ」 「はじめまして、笹原千里で~す」 強面の顔つきでジロリと見られても、千里さんは臆することなく、いつも通り明るく振る舞っていた。 「なぁ、卯月、お前の女房と彼女、二人を貸してくれ、この通りだ」 今までどちらかといえば高圧的な態度を取っていた鳥飼さんが手のひらを返したように、軟化させ頭を下げた。 「おい鳥飼」 今まで黙ってことの成り行きを見ていた度会さんが、凄みをきかせた低い声で口を開いた。 「未知と千里は俺にとって可愛い娘も同然。魑魅魍魎どもが犇めく九鬼総業に黙って差し出せと!?」 「私も同感です。可愛い妹たちをそう易々と渡せるわけないでしょう。お久し振りです鳥飼さん」 姿を現したのは橘さんだった。 「おぅ、優璃。一年ぶりか!?全然変わってないな。元気だったか?」 それまでの厳しい表情が一転。笑顔で橘さんにむぎーーっと抱き付いた。

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