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番外編 九鬼総業の内紛
橘さんに九条組の組長さんがみえられたので挨拶するようにと言われ、急いで社長室に向かうと、中は異様な空気に包まれていた。腕を前で組み険しい表情を浮かべる裕貴さんと、着流しに身を包んだ白髪まじりの初老の男性がこれまた眉間に皺を寄せ気難しい表情を浮かべ何やら話し込んでいた。声を掛けていいものか躊躇していると白髪まじりの男性が僕に気付き声を掛けてくれた。
「未知さん久し振り。体調はどうだ⁉」
視線がお腹に向けられた。大丈夫です、大きく頷くと、「そうか、それなら良かった」安堵のため息を漏らすと、男性……ううん、福田さんの表情が少しだけ和らいだ。
「卯月と秦とは二分の兄弟なんだ。二人とも心配していたぞ。怪我人の看病も大事だが、まずは自分の体を大事にしろ、いいな」
【福田さん、気に掛けて頂いてありがとうございます】喋れない代わりに笑顔で答えた。
「未知、これを見ろ」
裕貴さんから隣に座るようにと言われ腰を下ろすとスマホを渡された。
画面を覗くと、未明に九鬼総業の本部が放火され多数の死傷者が出ているというニュースが流れていた。
「あくまで噂だが真沙哉に組長にしてやると唆された本部長が手下に命じ放火させたらしい。鳥飼には睦の警護を最優先にし、しばらく動くなと言った」
「未知さんもしばらく動かない方がいい。この辺じゃ滅多に見掛けない関西ナンバーの車がさっき事務所の辺りをうろついていた。外に出ない方がいいかも知れん」
福田さんの言葉に声を失った。
彼や子供たちが待っているのにうちに帰れないの………?
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