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番外編 忍び寄る影
「取り敢えずご飯食べてください。冷めてしまいますよ」
橘さんがスマホを柚原さんに渡した。
「例え右でも、組長が左と言えば左。組長の命令には絶対服従。それがヤクザ社会の掟というもの。和泉さんも大変ですね」
「……吉柳会のオヤジは酒癖が悪くて、酔っ払うと必ず無茶苦茶な要求を若い連中に強いるんだ。皆の前で裸になって踊れはまだ可愛い方だ。幹部連中に命じ新入りに性的行為を強制したことも実際あるし……」
そこで吐き気をもよおして口元を押さえる和泉さん。顔色がみるみる青ざめていった。
「無理してまで言う必要はありませんよ」
橘さんが和泉さんの背中を優しく擦った。
「梶山は鷲崎に和泉の子守りを丸投げされて以降、組長のセクハラ行為から守るため自分のイロと公言し、そのように振る舞っていたんだ」
じゃあ、忙しいんだ切るぞ。ろくに話しもせず一方的に電話を切る柚原さん。焼き餅を妬いているのかブスッとしていた。
それからすぐに一太と遥香から電話があって。邪魔をしないよう廊下にそぉーと出て二人の元気な声を笑いながら夢中で聞いていた。
だから気が付かなかったんだと思う。
足音を忍ばて近付いてくる影に……
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