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番外編 七か月後
「一太のパパとおじちゃん達は、本当に仲がいいな」
度会さんが一太の手を繋ぎ、笑顔で客間に入ってきた。
「一家団欒のところすまない」
そう言いながら一太を膝の上に乗せ、畳の上に胡座をかいて座った。
「弓削と笹原と酔い潰れて横になっていたはずじゃ………」
彼が驚いて目を丸くしていた。
「あんなの呑んだうちに入らねぇよ。あれぐらいでべろんべろんに酔っ払うなんてな。弓削と笹原はまだまだ青いな。千里、あとで亭主を迎えに行ってやれ」
一太の頭を撫でながら機嫌良くゲラゲラと豪快に笑っていた。
「それはそうと、遥琉」
急に声のトーンが下がり、眉をひそめる度会さん。じっと彼を見据えた。
「鳥飼が危険を顧みずわざわざここに来たのは、7割は未知を襲うためかも知れんが、残り3割は恐らくお前に助けてほしくて頭を下げに来たんじゃねぇか」
「何で鳥飼が俺に?」
さすがの彼も驚いていた。
「何とかっていう飲み物を売ってんだろ?」
「タピオカドリンクです」
「あぁ、それだ!今の流行りにはどうも疎くてな。すまんな」
「いぇ大丈夫です。それが何か?」
「福井の野郎、鳥飼を試すのに反目がシマ張ってるところにわざわざ店を出させたんだよ。すぐに根を上げるとでも思ったんだろうよ。どんなに嫌がらせを受けようが、根拠のないデマを流されようが、相手にせず、受け流していた。当然相手は面白くないだろう」
度会さんはそこで言葉を一旦止めると、ちらっと裕貴さんを見た。
「そうだよな、裕貴。知ってた癖にすっとぼけているんじゃねぇぞ。何で遥琉に言わなかったんだ。未知が危ない目にあわなくても済んだかも知れないんだぞ」
いつも穏やかな度会さんが珍しく声を荒げた。
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