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番外編 彼の元婚約者

『未知、タイミング悪すぎ』 弓削さんに小声で言われた。 【何で?】 首を傾げ上目遣いに見ると、 『状況を察しろ』そう答えが返ってきた。状況ってどういう状況……?意味が分からずポカンとしていたら、 「あっ、ママだ!」 「ママおかえりなしゃい」 早速僕の姿を見付けた一太と遥香がパタパタと走ってきた。 「ん?ママ?」女性が怪訝そうな表情を浮かべ後ろを振り返った。 当然ながら目が合うわけで……… くるっと体の向きを変えると、眉間に皺を寄せながら険しい表情で歩み寄ってきた。 じろじろと頭のてっぺんから足の爪先まで二度三度と眺めると、くすっと馬鹿にするように鼻で笑われた。 「へぇ~どこにでもいる普通の子じゃないの。那奈の方が何倍も可愛いのに。遥琉の気が知れないわ」 威圧感のある甲高い声が事務所内に響き渡った。 「咲(えみ)!」彼が慌てて駆け付けてくれた。 「遥琉、昔の女関係ちゃんと整理しないと駄目だろ」 弓削さんが苦笑いを浮かべていた。 「だから彼女とはそういう関係じゃない」 口ではそう言ってくれたものの、何か後ろめたいことでもあるのか、視線を合わせようとはしてくれなかった。 「元フィアンセなんだろ?俺の聞き間違いか?」 「弓削それ以上言ったらぶっ殺すぞ」 ドスのきいたパパの低い声に、びっくりし目を丸くする子供たち。 「二人とも子供の前だぞ」 柚原さんが奥から姿を現した。 「何ぼけっとしてんだ。湍水組の姐さんをさっさと応接間に通せ」 彼と弓削さんを嗜めると近くにいた若い衆に声を荒げ命じた。 「 菱沼組(うち)の姐さんをバカにしたら、ただじゃおかないぞ。よ~く覚えておけ」 脅し付けるようにジロリと睨み付けた。

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