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番外編 彼の元婚約者

「……ち、…未知」 肩を強く揺すぶられてようやく我に返った。 辺りをぐるりと見渡すと太惺と心望が顔を真っ赤にしぶぎゃーぶぎゃーと大声で泣いていて、柚原さんと橘さんが懸命にあやしてくれていた。 二人の泣き声に全く気がつかないなんて。何やってるんだろう僕・・・・ あのあと一太と遥香の手を握り締め、彼女から逃げるように事務所を飛び出して家に帰ってきたんだっけ。 太惺と心望のオムツを交換して、おっぱいとミルクをあげようと思っていたのに・・・・ 「未知、大丈夫?」 髪を柔らかく撫でられて。 聞き馴染んだその声にはっとし、顔を上げた。 【………千里さん】 瞳に映ったのは心配そうに覗き込む彼女の姿だった。 【帰ったはずじゃ………】 「遥琉から電話を貰ってね。また自分の過去の女性関係で未知を傷付けてしまうかも知れないから、すぐに戻ってきてくれって頼まれたの」 【千里さん、僕ね、僕………】 耐えきれず涙を零した。 どんなときも味方になってくれる千里さん。心強く頼もしいもう一人のお姉ちゃん。 安堵が、安心が、涙となってあとからあとから溢れ出た。 「ほんと、困ったパパよね」 千里さんがそっと肩に腕を回してきて、そのまま抱き締められた。 「遥琉に何度も言ったんですよ。咲さんのことをちゃんと説明するようにと。朝から晩まで、休みなく太惺くんと心望ちゃんのお世話に追われて、ただでさえ疲れきっている未知さんを、更に追い詰めるような真似はしないでくれと」 「未知は遥琉の妻として堂々としていればいいんだよ」 橘さんも、柚原さんも優しくしてくれてありがとう・・・・ 嬉しさが溢れた。

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