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彼の元婚約者
「ねぇ遥琉」ちっちゃな手をぐーに握り締めすやすやとねんねしている太惺を抱っこし千里さんが姿を現した。
「気のせいかも知れないけど、ちょっと腑に落ちないのよ」
「何がだ?」
「う~ん、何だろう。アタシもよく分かんないんだけど、嫌な予感がするのよ」
太惺を起こさないようそぉーとソファーに腰を下ろした。
「もしかして罠じゃないかなって。遥琉の元フィアンセを疑う訳じゃないけど、遥琉をおびき寄せて、留守の間警備が手薄になる隙を狙って、未知や子供たちを襲うつもりじゃあ」
「咲はそんな女じゃない。お前に何が分かるんだ」
千里さんの言葉を真っ向から否定し、白目も見えるほどに目を見開いた。
「ーー・・・・女は男で変わるものよ」
そんな彼を哀れむような眼差しで見詰めると、少し間を置いて宥めるような口調でそう静かに言い返した。
「好きにすればいいわ、アタシも好きにするから」
暫く無言で睨み合ったのち、千里さんがため息を深くつき席を立った。
「未知、出掛ける準備して」
「おぃ待て!」
彼が反射的に千里さんの腕をガシッと掴んだ。
「さっさと行けよ!妻よりも大事なんだろうその女・・・・未知や子供たちは俺たちで命懸けで守るからほっといてくれ!」
普段は封印している地声で激しい怒りを彼にぶつける千里さん。
あまりの迫力に気圧され、たじたじになりすっと手を離した。
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