420 / 3632

番外編 紅涙

心地よい穏やかな春風がそよそよと吹いていた。今日は土曜日。小学校と幼稚園がお休み。黄色い歓声を上げ庭で鬼ごっこをして遊ぶ子供たちの賑やかな声が家中に響いていた。 「未知、橘さん、隣に座っても大丈夫?」ナオさんがひょっこりと顔を出した。 「えぇ勿論」 「太惺、ここちゃん、はるちゃん、一太………こうして四人揃うとと本当にそっくりだね」 ナオさんが目を細めながらよいしょと縁側に腰を下ろした。 のらりくらり煮え切らない彼に業を煮やした橘さんともあのあとすぐに激しい口論が始まり、子供たちを連れ、千里さんたちと家を出て信孝さんの家に身を寄せることになった。 「遥琉さんから連絡が全くないって彼から聞いたけど……本当?」 「えぇ、ここ3日、スマホの電源をオフにしているようで全く連絡がつかない状態です」 「そうなんだ。未知、大丈夫?」 うん、笑顔で頷いたものの、表情は強張ったままで、そっと目を伏せた。 まわりのみんなに心配ばかり掛けてごめんなさい。僕がもっとしっかりしてれば良かったのに……こうなったのは全部僕のせい…… ぎゅっと上唇を噛み締めた。 「未知は悪くない。自分を追い込むな」 信孝さんが仕事の合間をぬって様子をみに来てくれた。

ともだちにシェアしよう!