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番外編 真沙哉さんが失った大切なもの

多勢に無勢。母として子供達を守るため、姐さんとして菱沼組の組員を守るため。男の指示に黙って従った。 僕のせいで誰かが傷付くなんてもう2度と嫌だった。 口では抵抗したら子供を殺すぞ。余計な真似するな。そう脅していたものの、男は決して手荒な真似はしなかった。 連れて行かれたのは国道沿いに建つ、外観がかなり派手な3階建の建物。 一目見てラブホテルだと気が付いた。 「つい1か月までは営業していたんだが、今はここを根城に秘密裏に行動している。俺は地竜(ディノン)。四人いる黒竜のリーダーの一人で、唯一の日本人だ」 エレベーターで3階まで上り、廊下に出ると異様な光景が広がっていた。 揃いも揃って人相の悪い男達がフロアがウロウロと縦横無尽に歩き回っていた。 「浩然(レオハン)連れてきたぞ」 一番奥の部屋に案内された。 一太の手を握ったまま前に進めずにいたら、男に強く背中を押され、ベビーカーごと中に押し込まれた。

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