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番外編 真沙哉さんが失った大切なもの

「未知会いたかった」 あれ、真沙哉さんってこんなふうに優しい笑顔で話しをする人だったけ? どちらかといえば刺のある鋭い喋り方をする人だったのに。 まるで…………というか全く別人に入れ替わっているようでどうしていいか戸惑った。 「地竜が怖い顔をするからだろ?妻が怖がってる」 「顔が怖いのは元々だ。しかし、お前がな、三人も子供がいたとはな」 「おじちゃん!」 「お前は黙ってろ」 一太が勇気を出して男に再度声を掛けた。 ジロリと威し付けられても一太は一歩も怯まなかった。 それを見た真沙哉さんが、クククと急に笑い出して。 「さすがは俺の息子」 ゴツゴツと固い手で愛しそうに目を細めて頭を撫でてくれた。 更なる衝撃的なことを告げられたのはそのすぐあと。 ミルクを作るためポットだけ準備してあったカウンターに立っていると、地竜さんから、真沙哉さんが記憶喪失になっている事実を伝えられ茫然自失となった。 そんな彼が覚えていたのは、自分の名前と、未知という年下の隠し妻がいるということだった。 「リーと決着を付けるのに数日留守にする。その間浩然の世話を頼む。日本にこのまま残るか、一緒に上海に帰るか。俺が帰るまで決めておけ。あと、そうだ」 地竜さんが部屋の隅に控えていた一人の青年を手招きして呼んだ。

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