563 / 3275

番外編 ママ、一太がいるから大丈夫だよ

「ママ、いちたがいるからだいじょうぶだよ」 二人揃ってお手手を万歳しお昼寝する太惺と心望の寝顔を、ぼんやりと眺めていたら一太に励まされてしまった。 「ごめんね一太」 「ママはわるくない。いちたがママやたいくんやここちゃんまもるから、だからね、ママわらって」 僕を少しでも元気付けようと一太なりに考えたのだろう。にこにこと屈託のない笑顔を見せてくれた。 スマホはここに着く前に地竜さんに取り上げられた。 その前にバレないように彼のスマホに二度電話を掛けた。GPSがこの辺りを指し示してから途切れてくれるように神様に祈った。 勘の鋭い彼のことだから、それを手掛かりに僕達のことを探しだしてくれるはず。 「未知、お腹すいた」 車椅子を押しながら真沙哉さんが姿を見せた。 「朝も昼も食べないから。当たり前」 ぷいっとそっぽを向き、ぶっきらぼうに答えるマーナオさん。 「毎日味気のない弁当なんだ。温かければまだしも冷たいし」 二人の会話を聞いていた一太のお腹がぐぐ~と鳴った。 「いちたもおなかすいた」 「そうだね、何か作ろうね」 一階に厨房があると聞いて借りることにした。ガス、水道、電気が止められてなくて助かった。 揃いも揃ってみんな無愛想で寡黙で。 買い物を頼むのも顔色を伺いながらおっかなびっくり。 マーナオさんはというと、僕を監視しながらずっと片手でスマホを弄っていた。

ともだちにシェアしよう!