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番外編 裏切ることは絶対に許さない
「すみませんが、警察に連絡して下さい。僕の名前は卯月未知です。K市内にある菱沼組の関係者です。タクシー代これで足りますか?」
無関係なカタギの人を巻き込む訳にはいかないもの。マーナオさんから渡された二万円を運転手さんに渡そうとしたら、タクシー代はいいから、即答で断られた。
「そうか菱沼組の関係者か。奇遇だな………若い頃、もうだいぶ昔のことだが交番勤務していた時があって。当時、度会さんの家族にえらく世話になった。新しい組長も度会さんと同じで面倒見が良くてなかなか評判がいい。それなのに……大勢でよってたかって女や子供、赤ん坊、弱いものをイジメして……何が面白いんだ」
ハンドルを握り締め、男達を睨み付けた。
「振り切れるかどうか分からないが、しっかりと掴まってろ」
そう言うなり右に思いっきりハンドルを切ると、アクセルを強く踏んで発車させた。
人と車にぶつかる寸でのところでギリギリかわすと、警察に助けを 求め、そのままインターへと急いだ。
「しつこい連中だ」
バックミラー越しに後ろを何度か確認する運転手さん。
コンビニを出てから五分とも経たず、後ろから猛追してきた黒い車二台にあっという間に追い付かれてしまった。
クラクションを何度も鳴らし、わざと車間距離を詰めたりして、強引にタクシーを停車させようとした。
こんな切羽詰まった状況にも関わらず運転手さんは冷静そのものだった。もう少し辛抱すればお巡りさんが駆けつけてくれるはずだ。坊や我慢できるか?
何度も一太に優しく声を掛けてくれて。
怖がらせないように気を遣ってくれた。
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