593 / 3560
番外編 思いがけない再会
彼やお祖父ちゃんに聞きたいことは山のようにあった。
僕を逃がしてくれた真沙哉さんとマーナオさんのこと。
僕達を何とか逃がそうと最後の最後までハンドルを握り続けてくれたタクシーの運転手さんのこと。
運転手さんがスマホで話していた相手のこと。
「未知、彼は阪井組の幹部だ。立ち話もアレだから場所を移動しようか」
お祖父ちゃんがそっと声を掛けてくれた。
「黒竜の事は上総と度会に任せておけば大丈夫だ、心配するな。あと、遥香のことも。ぱぱたんとままたんと紫さんと、泣かないでお利口さんにして留守番をしているから。な、未知」
うちに帰ったらまず先に橘さんと紫さんにありがとうって言おう。それから、彼が焼きもちを妬かない程度に遥香をギュッと抱き締めてあげよう。
阪井組の組事務所に向かう車中でようやく彼と言葉を交わすことが出来た。
タクシーの運転手さんの知り合いの方というのが、千里さんの熱狂的なファンで、昇龍会のダンベイをしている、ある投資会社の経営者の男性だった。
すぐに千里さんに連絡が行き、僕や子供たちが地竜さんに拐われたことがお祖父ちゃんやお義父さんの耳に入った。
ともだちにシェアしよう!