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番外編 千思万考

「いやね、電話が来たときちょうど心に会っていたのよ。上総ちゃんの慌てっぷりがおかしくて・・・・つい思い出しちゃった。着流しのまま靴も履かず外に飛び出して、車出せ‼ってそりゃあもう大騒ぎだったのよ」 千里さんが目を細め、太惺と心望の顔を覗き込んだ。 「ママもたいくんもここちゃんも、一太もハルちゃんも、じぃじやみんなの癒しだからね。二人ともよく頑張ったね。偉いね」 頭を優しく撫でてくれた。 「癒しだなんて・・・遥琉さんやみんなの足を引っ張ってばかりで、迷惑ばかり掛けているのに・・・」 「そんな風に誰も思っていないわ。ねぇ遥琉」 「当たり前だ」 彼がにこって、やっと笑ってくれた。 「あ、あのね・・・・・」 意を決し彼に真沙哉さんの事を聞こうとしたら、千里さんが唇に人差し指を立てて「遥琉じゃなく、上総ちゃんに聞くこと。いいわね」小声で口止めされてしまった。 「ん?何だ?俺には聞かせたくない内緒の話しか?」 「そんな訳ないでしょ。タクシーの運転手さんのことよ」 千里さんが上手い具合に誤魔化してくれた。 「怪我はたいしたことないみたいよ。だから安心して。未知、いつまでも暗い顔をしてちゃダメ。可愛い顔が台無しよ」 千里さんの底抜けに明るい笑顔につられ、気付けば一緒に笑っていた。

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