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番外編 それぞれの愛のかたち

「………言いたいことはそれだけか」 「はぁ?」 よく聞こえなかったのか地竜さんが聞き返した。 「言いたいことはそれだけか、そう言ったんだ。なぁ地竜、神様はちゃんと見てるんだ。私利私欲に駆られた悪い連中に弄ばれながらも、人としての尊厳を踏みにじられても、それでも懸命に生きようとした紗智や那和にちゃんと光を当てて幸せという名前の花を咲かせてくれた。どんな悪党でも生き直すチャンスを与えてくれた。俺は紗智を愛している。過去なんてどうでもいい。デートのデの字も知らない初な紗智が可愛くて可愛くて仕方ないんだ。真沙哉の倍………いやその1000倍紗智を幸せにしてみせる」 聞いている方が恥ずかしくなるような台詞を、人目を憚らず堂々と口にする鞠家さん。紗智さん本人にも聞かせてあげたかった。顔を真っ赤にして照れまくる姿もきっと可愛いんだろうな~~ 「おぃ、てめぇー」 橘さんの制止を振り切り、目を吊り上げて彼が怒鳴り込んできた。 「人の女房に気安く触ってるんじゃねぇ」 地竜さんの手首を乱暴に掴むと高く掲げ、凄みをきかせて睨み付けた。 「お前が地竜か?」 「あぁ、そうだ。お前こそ何者だ?」 彼にどんなに睨まれようが地竜さんは全く動じなかった。怖いくらい落ち着いていた。 「俺は卯月遥琉。未知の夫だ」 「へぇー」地竜さんは鼻でせせら笑うと、彼の手を強引に振りほどいた。

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