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番外編 忍び寄るズーノンの影

「蜂谷と玉井が中国にいる知り合いに頼んで紗智や那和のことを調べて貰ったらしい。紗智は多分間違いなく24才で、那和はあと2ヶ月で20才になるらしい。俺も驚いたが、一番びっくりしたのは真沙哉だ。自分より二回り以上も年下で、まさかの未成年。本当に俺でいいのか、こんな中年のオヤジ、あと最低でも10年はムショから出られないだ。考え直すなら今のうちだって那和に手紙を寄越した」 「ちょっと関係ない話しを持ち出さないで」 那和さんが顔を真っ赤にし、急に慌てはじめた。 ちょうどそのときだった。 ひんやりとした風がどこからか吹きこんで来て、ゾクッと背筋が震え上がった。 心望を那和さんから手渡され抱っこしていた紗智さんが急に立ち上がった。 外の景色を見詰めるその目付きは普段の優しい彼とは全く違うものだった。 「マー、さっき誰かに見られている。そう言ってた」 「何でそれを早く言わねぇんだ」 那和さんに言われスマホを耳にあてる彼。 だって気のせいだと思っていたから。 自意識過剰だって笑われると思っていたから。 ごめんなさい、頭を下げ項垂れると、別に怒っている訳じゃないからと、にこっと微笑んで僕の頭と太惺の頭を撫でてくれた。 「鳥飼、弓削、周囲の警備を強化しろ」 彼が声を張り上げた。 その直後ーー 人影が窓の前を風のようにすぅーーと横切った。全身黒ずくめで、フードを深く被り顔まではよく見えなかったけれど、一瞬だけこっちを見て、挑発するかのようにニヤリと薄笑いを浮かべた。 「紗智!心望!」「一太、遥香!」 彼と鞠家さんが慌てて四人に駆け寄った。 「紗智………?」 呆然として立ち尽くす紗智さんに声を掛け、肩にそっと手を置くと、彼の小さな肩がびくっと大きく震えた。 「知り合いか?」 「………」 紗智さんは黙り込んだまま首を横に振ると、ガタガタと震えながらぎゅっと心望を抱き締めた。

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