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番外編 忍び寄るズーノンの影
「安売りするな、もっと自分を大事にしろ。ボク、はじめ日本語が分からなくて、安売りの意味、分からなかった。地竜に連れ出されようやく外の世界を知った」
右手に缶ビール、左手に椅子を持って那和さんが移動してきた。
「地竜は人嫌い、他人を信用しない。だから浮いた話しが全くない。白竜や緑竜は半信半疑じゃないかな?あの堅物の地竜にまさか愛人 がいたと知って驚いたんじゃないかな」
「だから未知は………」
「マーはみんなのマーだよ。独り占めはダメ」
那和さんに言葉を遮られ、しかも耳の痛いことを言われ、グーの音も出ない彼。
「オヤジよりも、地竜かなりしつこい。オヤジまだ可愛いほう。彼のスマホにあったマーの写真、いつの間にか自分のスマホに保存して、現像していつも持ち歩いていた」
ストーカーじゃねぇか、彼がぽつりと呟いた。
「好きすぎてどうしようもない。地竜だってどうしていいか分からないと思う」
那和さんが手慣れた手付きで缶ビールを一口口に運んだ。
「元デカが二人もいる前で未成年がビールを堂々と呑むとはな。相変わらず肝っ玉が座ってるな」
惣一郎さんが呆れたように失笑した。
今、たしか未成年って聞こえたんだけど………空耳?
「どうした?ポカーンとして」
「那和さん、まだ10代………なの?」
てっきり同い年だと思い込んでいたからびっくりした。
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