653 / 3281

番外編 忍び寄るズーノンの影

鞠家さんがスマホを操作し写真を見せてくれた。そこに写っていたのは、野暮ったい黒縁眼鏡を掛けた真面目そうな青年と、もう一人は茶髪のツンツンした短髪の青年。 「髪が短いのが恐らく白竜(パイノン)で、もう一人が緑竜(リュノン)じゃないか、そういわれているが、真意のほどは分かっていない。地竜くらいだろう、素顔を晒しうろついているのは」 「てか地竜自体何者なんだ?日本人なんだろ?」 「多分な……」 鞠家さんの視線が、一太と遥香と一緒にご飯を食べる那和さんと紗智さんに向けられた。笑顔で笑う二人を目を細め慈悲に満ち溢れた眼差しで優しく見詰めた。 「紗智も那和も、リーに命じられるまま会ったこともない、名前も知らない男達の慰み者になっていた。その中に地竜もいたそうだ。でも地竜は一度も二人を抱くことはなかった。紗智や那和の境遇を知り、那和をリーのもとから連れ出したのも地竜だった。真沙哉を助けたのも地竜だった。敵なのか味方なのか、いまだ得体の知らない男だ。でも一つだけいえるのは、未知を本気で愛しているということだ」 「はぁ?俺の方が、地竜の何倍も未知を愛しているぞ」 彼が目を吊り上げ声を荒げた。 「バカが付くくらい未知を溺愛しているのはみんな分かっている。だから、そんなにムキになるな」 鞠家さんが苦笑いを浮かべた。

ともだちにシェアしよう!